瀬戸内海に浮かぶ歴史の島々 〜上島町の文化と伝統〜

2024/07/19(金)

愛媛県の瀬戸内海に、25の島々からなる町「上島町」があります。この町は、美しい自然に囲まれながらも、長い歴史と豊かな文化を持つ特別な場所です。平安時代からの塩づくりの歴史、江戸時代の北前船交易、そして今も受け継がれる伝統行事——そんな上島町の魅力について、文化財の専門家である有馬啓介さんにお話を伺いました。

上島町ってどんなところ?

上島町は、愛媛県の北東部にあり、広島県と海を挟んで隣り合っています。25の島々からなりますが、人が住んでいるのは7つ。しまなみ海道の一部として、観光やスポーツイベントでも注目されています。現在の人口は約6000人。瀬戸内の穏やかな海に包まれ、ゆったりとした時間が流れる町です。

歴史を感じる「弓削島荘遺跡」

上島町の歴史の中でも特に重要なのが、弓削島(ゆげしま)にある「弓削島荘遺跡(ゆげじまのしょういせき)」です。ここは平安時代後期から室町時代にかけて、塩を生産していた荘園(しょうえん)でした。鎌倉時代になると、京都の東寺領となり、今も当時の文書が400通も残っています。

この貴重な文書は「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」と呼ばれ、ユネスコの「世界記憶遺産」に登録されています。そして、弓削島荘遺跡自体も、2021年(令和3年)に国の史跡として指定されました。

江戸時代に栄えた北前船とのつながり

江戸時代、上島町の島々は、日本海から瀬戸内海を通る「北前船」の重要な寄港地でした。北前船とは、大阪と北海道を結ぶ大きな商船で、米や酒、海産物などを運んでいました。

特に、岩城島(いわぎじま)や弓削島は船の寄港地として栄え、多くの商人や船乗りが行き交う場所だったそうです。この時代の交易の発展が、今の上島町の文化にも影響を与えています。

地域に根付く伝統行事「布団だんじり」

上島町の秋祭りでは、「布団だんじり」と呼ばれる特別な山車(だし)が登場します。これは、大阪発祥の「太鼓台(たいこだい)」が進化したもので、大きな屋根の上に布団を何枚も重ねたような形をしています。

祭りの1ヶ月前から、子どもたちが太鼓の練習をし、地域全体でお祭りを盛り上げます。力強い太鼓の音と、勇壮なだんじりの姿は、上島町ならではの伝統文化として今も大切に受け継がれています。

未来へ向けた文化財保護と活用

上島町では、こうした歴史や文化財を未来へとつなぐ取り組みが進められています。そのひとつが、新しい博物館施設の設置計画です。文化財を保存するだけでなく、観光や教育にも活かせるような施設を目指しているそうです。

また、文化財を活用したイベントや、地域振興のためのプロジェクトも行われています。歴史を大切にしながら、新しい時代に合わせた形で活用していく——そんな取り組みが、上島町の未来を支えていくのでしょう。

まとめ

上島町は、

  • 25の島々からなり、7つの有人島がある
  • 平安時代の塩の荘園「弓削島荘遺跡」があり、国の史跡に指定されている
  • ユネスコの世界記憶遺産「東寺百合文書」と関係が深い
  • 江戸時代は北前船の重要な寄港地だった
  • 「布団だんじり」という伝統的な秋祭りが続いている
  • 文化財の保存と活用のために、新しい博物館の設立が計画されている

という、歴史と文化がぎっしり詰まった町です。

豊かな自然に囲まれ、長い歴史と伝統を守りながら、未来へ向けた新しい挑戦を続ける上島町。訪れれば、きっと日本の歴史の奥深さと、人々の温かさを感じられるはずです。

関連情報

※詳細は公式サイトなどでご確認ください。

※写真は弓削島全景(上島町公式ホームページより引用)