白山平泉寺の歴史をひもとく:まほろばが伝える1300年の軌跡
福井県勝山市にある白山平泉寺歴史探遊館まほろばは、1300年の歴史を持つ白山平泉寺の文化や信仰を伝える施設です。ここでは、日本遺産に認定された石造りの町並みや発掘調査の成果を紹介しています。
今回は、副館長兼学芸員の柏村克己氏に、白山平泉寺(はくさんへいせんじ)の歴史的な価値や新たな発見についてお話を伺いました。
「まほろば」という名前の由来
「まほろば」という名前は、「住みやすい場所」を意味する古語に由来し、12年前の開館時に公募によって決定されました。白山平泉寺周辺は、かつて多くの僧侶や人々が集まり、信仰と共に暮らしていた地域です。発掘調査によっても、その当時の賑わいが明らかになっています。
白山平泉寺の歴史とは?
白山平泉寺は717年(養老元年)、泰澄(たいちょう)大師によって開かれた寺院です。白山信仰の発祥地として知られ、最盛期には6000もの僧坊(お坊さんが住む建物)があったと伝えられています。
発掘調査では700~800の建物跡が確認されており、ひとつの僧坊に約10人が住んでいたとすると、約7000~8000人もの人々が暮らす宗教都市だったと考えられます。
また、お寺でありながら防御施設(堀や砦)を備えていたことも特徴的です。これは、戦国時代に戦いから寺を守るための工夫だったと考えられています。
発掘調査で見つかったもの
発掘調査が始まって30年が経ち、その間に多くの貴重な発見がありました。
例えば、当時の町並みがどのように形成されていたのかを示す精巧な石畳の道路や、石垣で区画された計画的な都市構造が明らかになりました。また、日本国内だけでなく、中国やベトナムからの輸入品も発掘されており、白山平泉寺が国際的な交易の拠点であったことがうかがえます。
何万点もの貴重な遺物が発見されており、それらは当時の人々の生活や信仰の様子を今に伝えています。
現在開催中の特別展
現在、勝山市制70周年を記念して、特別展「みやこは遠くなかりけり~中世平泉寺僧侶の道筋をたどる~」が開催されています。
この特別展では、京都の相国寺との交流にスポットを当てています。「遠くない」というのは、物理的な距離ではなく、文化的な交流が深かったことを示しているのです。
開催期間:2024年8月3日~10月6日
京都と福井のつながりを感じる貴重な展示が見られます。
日本遺産「福井勝山石がたり」
白山平泉寺は、「400年の歴史の扉を開ける旅~石から読み解く中世・近世のまちづくり~」として認定され、通称「福井勝山石がたり」と呼ばれています。
白山平泉寺には、美しく整備された石畳や石垣が残されており、一乗谷朝倉氏遺跡や福井城の緑色に輝く笏谷石の石垣とともに、石造文化の高度な技術とその継承が評価されています。特に、角石を立てる独自の石積み技術が白山平泉寺と一乗谷朝倉氏遺跡の両方で確認され、これが技術の伝播を示す重要な証拠となっています。
まとめ
白山平泉寺は、奈良時代から続く白山信仰の中心地であり、石造技術を活かした中世都市としても歴史的に価値の高い遺跡です。柏村氏は、発掘調査で明らかになった新たな発見や、最新の展示技術を駆使した情報発信を通じて、この貴重な文化遺産の魅力を広く伝えていきたいと語ります。
この歴史を未来へとつなぐ「まほろば」では、発掘調査の成果を展示し、現在も新たな発見が続いています。1300年の歴史を感じながら、白山平泉寺の奥深い魅力を体験してみませんか?
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