北前船が築いた岩内の文化と漁師画家・木田金次郎の世界
北海道の日本海側にある港町・岩内町。この町には、古くから北前船の寄港地として栄えた歴史や、独自の文化が息づいています。今回は、岩内町教育委員会生涯学習課主幹であり、木田金次郎美術館館長でもある岡部卓氏に、岩内町の歴史や文化、そして美術館の役割についてお話を伺いました。
岩内町ってどんな町?
岩内町は札幌から西へ約100キロ、日本海沿いに位置する港町です。ニセコ連峰や積丹半島の山々に囲まれ、美しい海と山の景観が広がる自然豊かな場所。もともとニシン漁で栄えた町で、現在はスケソウダラやイカの漁業が盛んです。特に水産加工業が発展しており、たらこや身欠きニシンなどが有名です。
北前船と岩内町の歴史
岩内町には、1450年頃から人の往来がありました。本格的に町が形成されたのは、1751年に海の商人が岩内場所を開いた頃。江戸時代から明治時代にかけて、北前船の寄港地として大いに賑わい、多くの人や物資が行き交いました。また、泊村の萱野炭鉱(北海道最古の炭鉱)で採掘された石炭を運び出す港としても重要な役割を担っていました。
木田金次郎美術館と岩内の文化
岩内町には、画家・木田金次郎にちなんだ「木田金次郎美術館」があります。この美術館は、かつて国鉄岩内駅があった場所に建てられ、今年(2024年)で開館30周年を迎えます。木田金次郎は、明治26年に生まれた漁師画家。有島武郎の小説『生まれ出づる悩み』の主人公のモデルとしても知られています。西洋美術の影響を受けつつ、独自の画風を築いた彼の作品を展示し、地域の芸術文化の拠点となっています。
岩内町は、木田金次郎をはじめ、100年以上にわたって多くの画家を輩出してきた町でもあります。その文化的な土壌は今も受け継がれ、美術館は若手アーティストの育成や作品発表の場としても機能しています。
岩内町のユニークな魅力
- 日本のアスパラガス栽培発祥の地:岩内町は、日本で最初にアスパラガスの栽培が始まった場所としても知られています。
- 漁業の変遷:かつてはニシン漁が盛んでしたが、時代とともにスケソウダラ漁へとシフト。今も漁業と水産加工業が町の主要産業です。
- 豊かな自然と観光:山と海の美しい風景が広がる岩内町は、観光地としての魅力も抜群です。
未来へ受け継ぐ岩内町の文化
岩内町は、北前船の寄港地としての歴史を持ちながら、漁業や文化の面で独自の発展を遂げてきました。木田金次郎美術館を中心に、若手アーティストの育成や新たな文化の発信にも力を入れています。
厳しい自然環境の中で培われた「進取の気性」と「ネバーギブアップの精神」は、今も町の発展を支える大切な原動力。歴史を大切にしながら、新しい文化を生み出し続ける岩内町に、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?
ゲストプロフィール
岡部卓(おかべたく)氏
岩内町教育委員会生涯学習課主幹、木田金次郎美術館館長。1997年に岩内町に赴任。地理学を専門としていた経歴を持つが、現在は生涯学習課主幹として地域の教育文化振興に尽力する。木田金次郎美術館の運営を通じて、地域の芸術文化の発展に貢献している。
関連リンク
※写真は、木田金次郎氏(出典:木田金次郎美術館)
