眼鏡の街・鯖江のルーツを探る!「まなべの館」で学ぶ地域の発展
福井県鯖江市にある「鯖江市まなべの館」は、地域の歴史・文化・芸術を総合的に展示する博物館です。江戸時代の鯖江藩の歴史から、現代の眼鏡産業まで、さまざまな角度から地域の魅力を紹介しています。今回は、同館の学芸員である藤田彩氏に、施設の特徴や鯖江の歴史について伺いました。
まなべの館の由来
「まなべの館」という名称は、鯖江藩主の間部(まなべ)氏の名前と、「学ぶ」という意味を掛け合わせて付けられました。館内では、歴史展示と美術展示を行い、郷土の文化を幅広く学ぶことができます。また、市民の作品展示や体験イベントも開催されており、子どもから大人まで楽しめる施設となっています。
鯖江藩の歴史
1720年、鯖江藩は成立しました。初代藩主・間部詮言(まなべ あきとき)は新潟の村上藩から移り、この地を治めることになりました。当時の鯖江は、小さな村々が点在する地域で、まちづくりに多くの困難が伴ったと伝えられています。7代藩主・間部詮勝(まなべ あきかつ)の時代には、築城の許可を得るものの、財政難により実現には至りませんでした。
北陸道沿いに町屋が立ち並び、それを挟む形で陣屋と武家屋敷が設けられた特徴的な町割りとなっていました。
地域産業の発展
明治時代以降、鯖江の地域産業は大きく発展を遂げました。
- 越前漆器:
- 越前漆器は6世紀から続く伝統工芸で、継体天皇の時代から奨励されていた。
- 眼鏡フレーム産業:
- 明治末期に福井の増永五左衛門氏により産業化が始まり、現在では国内シェア90%を占める一大産地となる。
- 当初は真鍮製フレームから始まり、技術革新により現代の精密な製品へと発展。
- 織物業:
- 元々蚊帳作りから始まり、羽二重織物を経て、現在では最新技術を取り入れた産業として発展。
これらの産業は、厳しい冬の豪雪地帯での副業として始まり、職人たちの創意工夫と技術の継承により、鯖江を代表する基幹産業へと成長しました。
まなべの館の展示と役割
館内では、地元の文化や芸術も幅広く紹介しており、地元出身の作家・久里洋二さん(「ひょっこりひょうたん島」のアニメーション作家)の作品の展示も行っています。さらに、市民の作品も通年で展示し、地域の人々が身近に文化を感じられる場を提供しています。近隣の小学校とも積極的に連携し、子どもたちが芸術や歴史を学ぶ機会を増やす取り組みを行っています。
まとめ
鯖江市まなべの館は、地域の歴史・文化・芸術を総合的に紹介する貴重な施設です。江戸時代の鯖江藩の歴史から、現代の眼鏡産業に至るまで、多角的に地域の魅力を発信し続けています。藤田さんは、「これからも歴史や文化財の調査・研究を進め、より多くの人々に鯖江の魅力を伝えていきたい」と意気込みを語っていました。
ゲストプロフィール
藤田 彩(ふじた あや)氏
鯖江市まなべの館学芸員。学生時代から幕末史、特に井伊直弼に関する研究を専門とする。現在は幕末から明治・大正期にかけての歴史研究を中心に、鯖江の地域史や文化財の調査・研究に従事。間部詮勝をはじめとする鯖江藩の歴史や、地域の文化遺産の保存・活用に取り組んでいる。
関連リンク
※詮勝は、国元鯖江で領民に開放した「西山公園」を造成した。まなべの館はこの公園の近くに建てられている(写真)。
