歴史と革新が交差する「たつの」の魅力 - たつの市立龍野歴史文化資料館の新たな挑戦

2025/01/24(金)

兵庫県たつの市にある「たつの市立龍野歴史文化資料館」では、歴史資料の展示にとどまらず、最新技術を活用した新しい形の博物館運営に取り組んでいます。今回は、館長の新宮義哲さんに、たつの市の歴史や資料館の取り組みについてお話を伺いました。

たつの市立龍野歴史文化資料館とは?

龍野歴史文化資料館では、特別展や企画展を通じて地域の歴史を紹介し、文化財の保存・収集にも力を入れています。また、「海の楽校(がっこう)」「川の楽校」などの体験型イベントを開催し、歴史や自然に触れる機会を提供しています。

たつの市は2025年に合併20周年を迎え、揖保川流域の文化・経済の中心地として発展してきました。資料館では、地域の歴史を次世代へ伝えるため、デジタル技術を活用した新たな取り組みも進めています。

たつの市の歴史

たつの市は、15世紀頃に赤松氏が山城を築いたことをきっかけに、城下町として発展しました。戦国時代には、織田信長や豊臣秀吉の影響を受けつつ、福島正則や蜂須賀小六正勝といった武将が城主を務めました。その後、江戸時代には本多氏や脇坂氏などが城主となり、龍野城の整備が進められ、城下町の形が確立されました。

揖保川と物流の発展

この地域の発展には、揖保川が重要な役割を果たしました。揖保川は兵庫県内でも有数の河川で、古くから交通や物流の要として利用されてきました。江戸時代には、高瀬舟という小型の船が活躍し、米や酒、醤油、紙などの特産品が運ばれました。高瀬舟での輸送は、下りは1日、上りは3日かかる長旅でしたが、物流を支える大動脈として機能しました。

さらに、揖保川は北前船と連携し、西日本や北陸地域との交易にも関わっていました。特に、干鰯(ほしか)などの肥料や日用品が流通し、たつの市の経済を支える重要な役割を果たしました。こうした物流の発展が、たつの市を文化的・経済的な拠点へと成長させる基盤となったのです。

デジタル化で広がる歴史の魅力

龍野歴史文化資料館では、歴史資料のデジタルアーカイブ化を進めており、メタバースミュージアムを導入することで、期間限定で、世界中のどこからでも貴重な文化財を、閲覧できるようになります。歴史的に重要な資料をオンラインで見ることができ、教育機関などでの活用も進められています。

※企画展「たつペディア展 -最新技術を活用したリアルとバーチャルのMuseum-」2025年1月21日(火)~2月28日(金)開催

体験型イベントで学ぶ歴史

資料館では、展示を見て学ぶだけでなく、実際に体験できるイベントも開催しています。たとえば、「海の楽校」「川の楽校」では、川や海の自然を活かしながら、歴史や文化を学べるプログラムが用意されています。

地域の特産品である「薄口醤油」や「そうめん」も、揖保川の良質な水によって育まれてきましたが、こうした歴史も学べる、体験型イベントが人気を集めているとのことです。

未来へつなぐたつの市の歴史

龍野歴史文化資料館は、これまでの展示活動に加え、最新のデジタル技術を活用することで、より多くの人に歴史を届けようとしています。揖保川の恵みとともに育まれた地域の文化を、未来の世代にも伝えていくための取り組みは、これからの博物館活動の新しい形といえるでしょう。

ゲストプロフィール

新宮義哲(しんぐう よしのり)氏

たつの市立龍野歴史文化資料館の館長。中世戦国時代や幕末史が専門。館長として展示企画や資料の保存・収集に携わるほか、地域の歴史や文化を活かした普及活動にも力を入れている。近年は、体験型イベントや、メタバースミュージアム事業など、デジタル技術を活用した新しい取り組みを推進している。

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