【オンライン浪漫紀行】東北海道見聞録〜北前船寄港地フォーラムin釧路
北前船はかつて日本の物流を支えた重要な航路でした。その寄港地の歴史や文化を未来へとつなぐため、「北前船寄港地フォーラム」が毎年開催されています。本記事では、2024年6月に開催されたフォーラムの内容や、日本遺産としての取り組み、観光との関わりについて、観光交流アドバイザーの釼菱英明さんにご紹介いただきました。
北前船寄港地フォーラムとは?
2024年6月28日・29日、北海道釧路市で「北前船寄港地フォーラム」が開催されました。これは、日本各地の北前船の寄港地が連携し、歴史や文化を未来へとつなぐためのイベントです。今年で34回目を迎え、400〜500名が参加しました。
フォーラムでは、北海道から本州に昆布や魚肥などを運び、各寄港地の特産品を再び北海道へ届けた北前船の歴史が語られました。式典では、釧路の特産品である長昆布を使ったテープカットが行われ、北前船と地域のつながりを改めて感じることができました。
日本遺産としての「北前船寄港地・船主集落」
今年度、新たに福井県美浜町、新潟県村上市、岡山県岡山市の3つの自治体が追加認定され、「北前船寄港地・船主集落」として認定された自治体は52カ所となりました。これにより、北前船に関わる地域の文化がより広く認知され、観光や地域活性化の大きな推進力となることが期待されています。
昆布と和食文化の魅力
フォーラムでは、福井県敦賀の奥井海生堂・奥井社長が昆布の魅力について語りました。昆布の出汁は、旨みを引き出しつつ脂肪分を抑えることができるため、健康的な食生活を支える重要な要素です。
かつて北前船は、北海道から敦賀港を経由して京都へ昆布を運び、和食文化を支えていました。しかし、近年の温暖化の影響で昆布の生育環境が変わり、課題も多くなっています。それでも、昆布の文化と価値を次世代につなぐ努力が続けられています。
北前船を支えた人物「高田屋嘉兵衛」
江戸時代、北前船の交易で活躍したのが、高田屋嘉兵衛(1769-1827)です。彼は北海道と本州を結び、昆布や海産物の流通を支えた重要な人物でした。1811年、彼はロシアのゴローニン事件で仲介役を果たし、日露の和平に大きく貢献しました。その結果、彼の功績は高く評価され、後年、彼の名は歴史に刻まれました。
兵庫県洲本市には、高田屋嘉兵衛の偉業を称える「高田屋嘉兵衛公園」があり、彼の没後170年と日露国交回復40周年を記念して、ゴローニンと嘉兵衛が並び立つ「日露友好の像」が建てられています。この像は、両国の友好関係を象徴するものとして、多くの人々に親しまれています。
アドベンチャートラベルの可能性
昨年、コロナ禍で延期されていた「アドベンチャートラベル」の世界大会が北海道で開催されました。アドベンチャートラベルとは、地元の文化や環境への関心を高めながら楽しむ旅行スタイルで、特に海外の富裕層に人気があります。
北海道の自然や歴史を体験しながら、地域と交流する観光プランが今後の注目ポイントとなっています。釧路湿原でのカヌー体験など、自然を満喫できる乗り物もその一例です。
北前船とサイクルツーリズム
釼菱さんは、北前船の寄港地をめぐる新たな観光プラン「KITAMAE CYCLE ROUTE」を提案しています。これは、電動スポーツ自転車(E-bike)を活用したサイクルツーリズムの一環で、日本海側を自転車で巡りながら、歴史や文化を体験できるルートです。
現在、京都府と連携し「海の京都サイクルアドベンチャー」という4泊5日のガイドツアーを実施。今後は新日本海フェリーを活用し、北海道から舞鶴へ渡り、そこから日本海沿いを京都まで走るルートを世界へ発信したいと考えています。
釧路の魅力
釧路は、「笑えるほど涼しい」と言われるほど、夏でも快適な気候が特徴です。特に夕日は美しく、知床羅臼の夕日と並び、日本でも有数の絶景スポットです。
また、道東は北海道昆布の約3分の1を生産しており、特に食用向きの長昆布がよく獲れる地域です。北前船の時代から続く昆布文化を、これからも大切にしていきたいものです。まとめ
北前船寄港地フォーラムを通じて、歴史や文化を学ぶだけでなく、新しい観光の可能性にも触れることができました。次回のフォーラムは、2024年11月22日・23日に石川県加賀市と福井県で開催予定。さらに2025年秋には長野県での開催も決定しています。
歴史を知り、未来へつなぐこのフォーラム。次回の開催も楽しみですね!
ゲストプロフィール
釼菱英明(けんびし ひであき)さん
大阪府枚方市在住。観光交流アドバイザーとして活動。特に京都北部の舞鶴市で月2回、観光交流アドバイザーとして招かれ、修学旅行誘致などを手掛けている。
