歴史が息づく臼杵の街 ー 歴史資料館が伝える地域の歩み
臼杵市の歴史と文化
大分県臼杵市は、戦国時代にキリシタン大名・大友宗麟が本拠地としたことで知られ、南蛮貿易が盛んだった港町です。現在も歴史的な街並みが残り、国宝の臼杵石仏や城下町の風情が感じられる魅力的な場所です。
今回は、臼杵市歴史資料館の学術専門員・木本邦治氏に、臼杵の歴史や文化、資料館の取り組みについてお話を伺いました。
歴史資料館の役割
木本氏は、臼杵藩(現在の臼杵市、大分市、津久見市、豊後大野市の一部を含む)の歴史を専門に研究し、その成果を展示や講座を通じて、地域の人々や観光客に伝える活動を行っています。
同館では、古文書の調査をもとに江戸時代の社会制度や教育の歴史を明らかにし、現代に通じるテーマと関連付けて展示を行っています。また、市民向けに年11回の歴史講座を開講し、臼杵の歴史や文化を分かりやすく解説しています。
臼杵の魅力とは?
臼杵市は自然豊かで、海と山に囲まれた風光明媚な土地です。歴史的遺産も多く、国宝の臼杵石仏やキリシタン史跡、江戸時代の町並みが残る城下町は見どころ満載です。
食文化も特徴的で、「きらすまめし」や「黄飯」など独自の郷土料理が伝わっています。また、豊かな湧水を利用した酒・味噌・醤油の醸造業が盛んで、臼杵市はユネスコ食文化創造都市にも認定されています。
歴史資料館の展示内容
臼杵市歴史資料館では、貴重な近世絵図(江戸時代の地図)や古文書をテーマごとに展示しています。
最近では、江戸時代の疫病対策に関する展示が行われました。コロナ禍の中で、江戸時代の人々がどのようにコレラや麻疹と向き合ったのかを紹介することで、現代の防疫対策とも関連付けています。また、地元の小学生向けに、臼杵の水路整備や治水事業に貢献した歴史を学べる展示も行っています。
臼杵城の歴史
臼杵城は、1556年に大友宗麟が築いた城で、当時は海上の丹生島( にうじま )にありました。その後、豊臣秀吉の家臣・太田一吉によって本格的な城郭へと改修され、関ヶ原の戦い後には稲葉氏が城主となり、城下町の発展を進めました。
明治時代には、日本最初期の公園の一つとして整備され、現在も桜の名所として多くの人に親しまれています。石垣や櫓門など、当時の遺構も一部残っています。
臼杵の特産品と食文化
臼杵の醸造業は、江戸時代から続く伝統があります。特に醤油の生産が盛んで、「カニ醤油」「フンドーキン醤油」「富士甚醤油」などの老舗が140年以上の歴史を持ちます。
また、江戸時代には藩の財政改革の一環として楮(こうぞ)の栽培が推奨され、和紙製造も行われていました。現在では、地元の小学校で卒業証書を手作りする取り組みとして、その伝統が受け継がれています。
まとめ
臼杵市は、キリシタン文化や南蛮貿易の歴史を持ち、豊かな食文化とともに今もその魅力を残す街です。臼杵市歴史資料館は、これらの貴重な歴史資料を保存し、市民講座や展示を通じて歴史を身近に感じる場として重要な役割を果たしています。
臼杵の歴史を学ぶことで、過去と現在のつながりを感じることができます。ぜひ一度、臼杵の街を訪れ、その魅力を体感してみてください。
ゲストプロフィール
木本邦治(きもと くにはる)氏
臼杵市歴史資料館 学術専門員。江戸時代の古文書研究を専門とし、臼杵藩に関する歴史資料の調査・研究に従事。市民向け歴史講座の企画・運営も手がけ、地域の歴史や文化の普及啓発に尽力している。
